砂型を凍らせてつくる画期的でエコロジーな鋳造システム
鋳造所というと暑くて臭いのきつい工場というイメージがあるがそんな常識を覆す画期的な凍結鋳造システムを構築している鋳造所が大阪市西淀川区にある三共合金鋳造所だ。 三共合金鋳造所 http://www.ksh-sankyo.com/ |
三共合金鋳造所 専務取締役 松元秀人様にお話をお伺いした。
●凍結鋳造システムとは
鋳造に使われる一般的な砂型は、砂に樹脂粘結剤を混ぜて固める。しかし、樹脂粘結剤が鋳込む際に溶湯と反応し、悪臭が発生する。また、固まった鋳造物を取り出すために、ハンマーなどで鋳型を壊すときに振動・騒音・粉塵が発生するという問題があった。
凍結鋳造システムでは、砂をマイナス40度で急速冷凍することで鋳型を造り、そこに溶湯を流し込むことによって鋳造物を作り出す。
鋳型は砂と水だけで作られるので悪臭が発生しない。また鋳型は解けてくると自然に壊れるので振動・騒音・粉塵の発生も激減する。
さらに鋳型を造る際に樹脂粘結剤を使わないことで砂が容易に再利用できる為、産業廃棄物が激減し、環境にやさしい上コストを削減できる。
業界のタブーに挑戦
砂型を凍らせる凍結庫 |
こんなメリットの大きい鋳造技術だが簡単に導入できるものではなかった。1000度以上の液体になった金属が水分に触れると水蒸気爆発を起こしてしまう。 鋳造に水分はタブーだったのだ。 また、凍った鋳型は高温の溶湯を流し込むことでどんどん解けてしまう。中の金属が固まる前に鋳型が崩れないようにしなければならないのだ。 |
このシステムを開発したのは冷凍機メーカーの前川製作所だが、鋳物は専門ではない為、実用化の共同開発してくれる鋳物会社を探していたところ、三共合金鋳造所が手を挙げたわけだ。
凍結鋳造システムはまさに当社に必要なシステムだった
――なぜ凍結鋳造システムに取り組もうと思ったのですか?
凍結庫に送る冷気を作り出す冷凍機 |
「西淀川区は工場地帯でしたが、もともとあった工場が閉鎖されると、利便性がよいため、大きな空地ができたところにマンションが建ちます。当社のすぐ裏にもマンションが建ちました。悪臭・騒音・粉塵による苦情で工場を移転せざるを得ない状況は避けたかったのです。 移転することも検討しましたが、当社では製造に特殊な作業が必要になる為、工場を移転することにより技能を持った人員を失う可能性もありました。 |
凍結鋳造システムはまさに当社に必要なシステムだったのです。
昔からの職人はそんな技術を全く信用していませんでしたが、私には「絶対にいける」という確信がありました。」
環境問題がクローズアップされている現在、さらに注目される技術ではないだろうか。
まだ凍結鋳造システムが使えるのは製品の一部だけだが、システム導入後の6年間で
・扱える鋳物の重量が20Kgから35Kgへアップ
・鋳込む温度が1350度から1450度へアップ
などさらに技術向上しているそうだ。
環境問題がクローズアップされている現在、さらに注目される技術ではないだろうか。
まだ凍結鋳造システムが使えるのは製品の一部だけだが、システム導入後の6年間で
・扱える鋳物の重量が20Kgから35Kgへアップ
・鋳込む温度が1350度から1450度へアップ
などさらに技術向上しているそうだ。
「もともと工場地帯であったところに、後から住宅ができたわけですが、住んでいる人にとっても一生に一度の買物なわけで、暮らしやすい環境を求めるのは当然のことです。
住人と工場とが意見を主張しあっても意味がありません。地元住人の方々とふれあい、相互理解を深める為に、稲荷祭、焼肉パーティー、餅つき大会、工場見学などの活動を行っています。また、テレビや新聞、雑誌などのメディアに登場することで、工場に興味を持ってもらい、将来は当社で働きたいと思ってくれるような若者が育ってくれるとうれしいですね。」
住人と工場とが意見を主張しあっても意味がありません。地元住人の方々とふれあい、相互理解を深める為に、稲荷祭、焼肉パーティー、餅つき大会、工場見学などの活動を行っています。また、テレビや新聞、雑誌などのメディアに登場することで、工場に興味を持ってもらい、将来は当社で働きたいと思ってくれるような若者が育ってくれるとうれしいですね。」
鋳物工場として残っていく価値
――これからの目標を教えて頂けますか?
専務取締役 松元秀人様 |
「特に自動車関連工場の海外シフト、電気自動車の登場などで鋳物を使う製品の国内需要は減っています。何もしなければ仕事はどんどん減ってしまうわけです。 私達は国内にこだわり、鋳物工場として残っていく価値というのを大切にしたいと思っています。その為にはオリジナル部品の品質を高め、会社の知名度をアップさせる必要があります。 |
今回の取材で、改めて中小企業の生き残る道は大量生産ではなく、小ロットで技術力の高いサービス・商品であると感じた。
中小企業は、大量には必要なくても、なければ困る。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」、そんな会社を目指す必要があるのではないだろうか。
松元秀人様お忙しいところ取材へのご協力ありがとうございました。
三共合金鋳造所
株式会社 三共合金鋳造所
大阪市西淀川区佃5-10-7
電話06-6472-3571(代)